アラブのもてなし

 アラブのもてなしは、古来から有名である。彼らは、見ず知らずの人にでも、初めて会ったばかりの人にでも、たとえ敵であろうとも最大限にもてなそうとする。お茶やコーヒーはもちろん羊をほふっての盛大な御馳走ごちそうまでしようとする。最後の一滴の水であろうともそれを客に供する。

 この習慣は、アラビア語でディヤーファと呼ばれ、英語ではArabic Hospitalityと訳され、アラブ世界の外にも広く知られている。

 アラブ人はもてなし好きで、人を招くことに喜びを感じ、自尊心が満たされるのだと解釈されている。しかし、必ずしも常に、人を招くことに喜びと楽しみを見いだしているというわけでもない。このディヤーファは、彼らにとって守らねばならない社会的慣習であり、一種の相互扶助的意味ももっている。(中略)客は客としてのおもんぱかりが必要とされる。状況をいち早く直観して、相手がディヤーファの義務を履行しようとするのに対して、「いやいや結構です。ちょっと急がねばなりませんから」などといって断る思慮をもたねばならない。

(「アラブのもてなし」、99頁より)

トップページ > ■片倉もとこの文章 > アラブのもてなし
トップページ > ■片倉もとこの文章 > アラブのもてなし