財としての金

 一番小さいナジュマが、前歯の金をのぞかせてにっと笑う。虫歯を治療したのではない。お金ができると、財産保存に、金を前歯に入れるのである。子どもに入れてやるのは稀だが、大人の女たちは、三つも四つもきらめかしていることがある。「あなたは、どうして奥の方にかくしてるの。堂々と前に見せたらいいのに」と問われたこともあった。

(『アラビア・ノート』(ちくま学芸文庫版)、41-42頁より)

この記述に関連した最新の現地調査による研究成果は『サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年』(河出書房新社、2019年)114-115頁「女性だけが身に着ける金、コイン、貝」にあり