アラビアの人たちは、下着にも毎日きかえる衣服にも、寝具などにも、お香をたきこめます。(中略)居間、客間、寝室などにも香をくゆらせて楽しみます。健康にもいいという人もいます。(中略)特別な場合でなくとも、毎日の生活のなかで、洗濯をしたあとの下着や衣服にお香をたきこめます。衣服を贈りものにするときは、お香もいっしょにそえることが、ならわしになっています。この衣服にこのお香をどうぞというわけです。
女ばかりではありません。男も香をたきこめます。(中略)男女のつきあいは、オープンにはなされないのですが、すれちがいざまや、エレベーターにのこっていた香りから、恋がめばえることもあるといいます。
わたしたちのうちに招いた女人たちは、しきたりどおり、お香のあとは長居せず、いとまをこうて去りました。ひそやかな、品のよいのこり香が、しばしただよい、宴のおわりを告げていました。
(『ゆとろぎ―イスラームのゆたかな時間』』68-69頁より)
この記述に関連した最新の現地調査による研究成果は『サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年』(河出書房新社、2019年)134-135頁「香りのある日常」にあり