道で男性とすれちがうと、娘たちはスマーダの長いすそを頭からすっぽりかぶって、しゃがみこむ。男性の方も異性を見ることは慎むべきだとされ、歌舞伎のおやま、、、のような仕草ですっと優雅に顔をそむける。（中略）女のスマーダは、たいがい真赤な花もようのデザインである。それをかぶってしゃがみこんだ姿は、赤いチューリップのつぼみのようで、ミニスカートなどより、よほどなまめかしい。そっと顔をそむけて通りすぎる若い男と赤いつぼみとの出会いの絵図は、江戸時代の版画にも似て沙漠のエロチシズムかもしれない。

（『アラビア・ノート』（ちくま学芸文庫版）、104頁より）

この記述に関連した最新の現地調査による研究成果は『サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年』（河出書房新社、2019年）4-5、76-77頁「未婚女性と既婚女性の衣服」にあり