日没

 今しも沙漠の地平線に沈みゆく深紅の太陽。生きとし生けるものを今日も制圧し続けた暴君。みんなほっとする。太陽の猛威を許してひっそり息をこらしていたものすべてが、動き出す。人間も羊も山羊もさそりも。沙漠全体がにわかに活気づいてくる。

 新しい一日が始まるのだ。アラビアの一日は、日没から始まる。

(『アラビア・ノート』(ちくま学芸文庫版)、18頁より)

この記述に関連した最新の現地調査による研究成果は『サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年』(河出書房新社、2019年)140-141頁「半世紀前の女性の一日」にあり