住まいの形態が大幅にことなっても、ベドウィンの住まいの原形は、みなテントに戻っていくようである。人間の住居を考えるときに、ふつうは欠くべからざるものとみなされる便所といったものも、ベドウィンの場合には、住居のなかにふくまれない。ひろびろとした荒野が、洗面所でありトイレである。定着的住居をつくる場合にも、図でわかるようにいちばんあとでつけたしのようにつくるのがトイレの部分である。ひろびろとした自然のなかで人間の自然現象を処理することになれてしまうと、日本のせまいアパートの、そのなかでまたさらにせまいトイレを使うのは息がつまりそうに感じられる。
(『世界旅行―民族の暮らし3住む・憩う―民家と家具、そして人の営み』119頁より)
この記述に関連した最新の現地調査による研究成果は『サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年』(河出書房新社、2019年)56-57頁「家屋の空間―女性と男性、内と外」にあり