結婚したばかりのうら若い女性が、親きょうだいが住んでいるむらから三十キロほどはなれた荒野のなかに、ぽつんとテントをはる。夫が放牧に出かけたり、出かせぎに行ったりしているときには(中略)ピストルや鉄砲が、かならず置いてある。ヒツジの乳をしぼり、チーズやヨーグルトをつくり、奔放な荒野の愛の詩を口ずさんだりしながら、楽しげに働く。ときには百キロ以上もはなれた都市に出かけ、市場で、買いものをしたり、あるいは、ナツメヤシの葉でつくった敷物や、ヒツジの毛で織った敷物を売りに行ったりもする。
(『沙漠へ、のびやかに』15頁より)
この記述に関連した最新の現地調査による研究成果は『サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年』(河出書房新社、2019年)60-61頁「ラウシャンの出窓―内から外を自由にみる女性」にあり