女の部屋側の外には、ギルバとよばれるヤギやヒツジの皮でつくられた水袋が置かれている。皮の表面から気化熱を蒸発させてなかの水を冷やすため、草や木枝でつくられたシェルターのところにギルバが置かれている。ムラッバアでの定着がすすむと、ギルバは、先にのべたようなラングでつくられた素焼きのつぼになるが、気化熱の蒸発を利用して冷たい水をつくるのは同じである。この水入れの近くには、たいてい、井戸から水をくむ時に使う皮のバケツとロープ(ダッル)がころがっている。近年は皮のバケツの代わりに自動車の車輪のチューブゴムでつくられたバケツもおおくみかける。
(「沙漠に生きるベドウィンのテント」119頁より」)
この記述に関連した最新の現地調査による研究成果は『サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年』(河出書房新社、2019年)118-119頁「水くみの道具にみる半世紀の変化」にあり