イスラーム世界に関しては、人間性弱説についても話しておかなければなりません。(中略)文化人類学という学問をよすがに、人びとの間にはいりこんで、フィールド・ワークをしていますと、この人たちは、「人間というものは、所詮、弱いもんだ」ということを、いさぎよく認めていることに気がつきました。人間は、そんなに強くなれない。したがって、女性はベールをかぶり、髪の毛をかくす。女性の魅力に関しては、男性を誘惑にさらさないように、髪の毛を隠しておく。わたしは男性になったことがないから、ようわからんのですけれども、男性は誘惑に弱い。異性の誘惑には、ことさら弱いらしい。
(『旅だちの記』、315-316頁より)