コーヒーのつくり方

 彼らは、夜が明ける少し前に起き出す。朝の祈りをすませると、まずなされるのが、コーヒーを淹れることである。これは男の役目である。純粋のアラビアコーヒー豆を香ばしく煎ることから始める。煎り終わると少しさましてから、真鍮しんちゅう製のお寺の鐘をさかさまにしたような形の小さなハワンドをしっかりとひざの間にはさんで、その中にコーヒー豆を入れ、すりこぎ状のものでとんとんと豆をくだく。アラビアコーヒー専用の美しい形をしたコーヒーポット、ダッラに湯を沸騰させておき、その中にくだいた豆を入れて攪拌し、再び火にかける。煮たってきたら、ハイルとよばれる強い香料の実(ショウズク、カーディモン)を加え火からおろす。コーヒーには砂糖を全く入れない。ブシュール族の人たちなどはしょうがを入れることもある。コーヒー豆をつぶすのどかな音と新鮮なコーヒーの香りは、沙漠の朝の美しいメロディを奏でる。

(『アラビア・ノート』(ちくま学芸文庫版)、54—56頁より)

この記述に関連した最新の現地調査による研究成果は『サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年』(河出書房新社、2019年)120-121頁「アラビア・コーヒーを淹れる」にあり

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