移動区間も生活空間

 あちらこちらへ移動して歩く遊牧民が住居とするテントというと、仮住まいのような印象をもつ。しかし、アラビア人は、それを仮住まいとは全く思っていない。テントをたてて、そこに少しの間だけ住み、それを壊して、また別のところに行って建てるというふうにしていくこと自体が、自分たちの生活であると考えている。点だけで成り立っているものは生活ではない、線がなければならないと考えている。点と点を結ぶ線の上を自分たちの住まいを担いで移動している。そういう移動区間も生活であるという意識がある。

(「アラビア人の住まいと生活」、10頁)

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