豊かな沙漠

 かつて,日本の著名な建築家の沙漠開発計画にかかわったことがあった.「今度のプロジェクトは楽だ.白紙の上に線を引くようなもの.日照権問題もなし・・・」というその大家の言葉に,沙漠が否定どころかその中身がまったく無視されている存在なのに愕然としたことがある.沙漠はけっして白紙ではなく,日照権はなくとも日陰権がある.人間も住み動植物もそれなりに豊かさをもち,さまざまなことを語りかけてくれる.「過疎もいいもんだ.佳疎だよ.」とか「産業型時間にそって,毎日を切り刻むように生きることもあるまい.」とか「パイを大きくすることより,小さいパイをどう分けるかを考えたらどうか.」とか….沙漠のうたが,のびやかに流れている.

(「沙漠のうた―産業型開発から文化型開発へ」、巻頭言より)