私の消夏法

 今日の暑さは、ことさらひどかった。またしても私の消夏法を採用せざるをえなかった。長いガーゼのかぶりものを、水でぬらし てゆるくしぼり、頭から、足の先まで、身体中にかぶせて、横たわるのだ。こうすると、ガーゼの水分が空中に消える時、気化熱が私の身体から奪われて、少しひんやりしてくるのである。素焼の壺に水を入れて風通しの良いところに置いたり、西瓜を割って、かんかんでりのところに放置してから食べるのと同じ原理である。水も西瓜も少し冷たく感じられるようになる。この彼らの冷却法から学んだのだが、マリアムたちは、あれは、西瓜や水に限るもので、人間は、絶対にそういうことをしてはいけないと言い張る。

たしかに、これを毎日続けていると、身体の調子が、みるみるおかしくなっていくのがわかる。だが、今日の暑さでは、仕方なかった。

(『アラビア・ノート』(ちくま学芸文庫版)、17頁)